河川敷の白い巨塔

 昨日も奴に襲われた。この時期になるとさらに増殖するあいつだ。そう、「蚊柱」だ。僕のバイト先は大きな河川を挟んで向こう側に位置しているのでかならず河川敷を通らなければいけない。いつも16:30くらいに家を出て自転車に載ってバイト先に向かうのだが、そこで蚊柱に衝突してしまうというわけだ。事前に目視できれば避けることもできようが、いかんせん自転車でそこそこの速度を出しながら走っているのでいつも蚊柱に突っ込んでは「ぐえぇ」と情けない声を上げている。

 

奴の正体

 聞くところによるとどうやらこの蚊柱というもの、「ユスリカ」という蚊のオスが求愛のために軍団を形成したものであるらしい。その中にメスが飛び込み、お目当てのイケメンを探して繁殖に励むというわけだ。我々から見ればたいへん迷惑なものである。さらに厄介なことに、この蚊柱に不幸にも突っ込んでしまったに人間の頭を追いかけてくる阿呆が何匹か必ずいる。これも奴らの習性らしい。ハーレムアニメのヒロイン顔負けのチョロさだ、オスだけど。

 

運命

 しかしこのユスリカという生き物、悲しい運命を背負った生き物である。彼らのオスの寿命は1日、もしくは長くて数日のものであるというのだ。というのも、彼にはなんと口がないらしい。必要性のなさから進化論に従って退化したようだ。彼らはセミよりも短い寿命の中で必死に蚊柱を形成し、メスに選ばれるために河川敷をブンブンと飛んでいるわけだ。

 

夏が来る

 そんな中、僕はバイトに行く時は最低でも5匹くらいは彼らの命を奪っている。避けられないからだ。まだ5月というのにもかかわらずこの多さなわけで、今年はさらに暑い夏がやってきそうでウンザリする毎日である。